紹劇(シャオジュイ)とは−

  紹劇は、中国の古い声調「乱弾調」の系列に属していて、「紹興乱弾」とも呼ばれ、
俗に「紹興大班」とも言われます。浙江省の主要な地方劇の一つで、乱弾戯曲は清代
康乾年間におこり、その劇言語は大衆的で分かりやすく、音楽は激しく、節まわりも
メリハリが効いています。
  紹劇の声調は主に、「二凡」、「三五七」の2種類です。
「二凡」は、板調子の格津に属し、その音は高く激越です。
西北秦調の影響を受けたもので、元代に蒙古人によって江南にもたらされたと伝えられ
ています。その伴奏は、早いテンポの打楽器と、ゆっくりとした唄によって出来ていて、
その音は何里か遠くまで聞こえると言われています。
「三五七」は、乱弾のメインの調子で、哀愁を帯び、抑揚のある美しい調べとなって、
多くの音が混ざり合い、郷土色が色濃く漂っています。
  魯迅先生が「社戯」という文章の中で、「耳に流れてくるのは悠長な横笛」と
書いているのは、「紹劇」のことです。
  「三五七」は笛調子に属し、その音は華々しく優雅で、「二凡」とは異なる
風格を持ちます。これらは数百年を経る中で、相互に融合し合い、紹劇の粗野と洗練、
急緩といった二大特色となっています。紹劇の伝統は豊かで、「農村芸術の花」
と讃えられる演技は豪快で奔放、誇張がとても的確で、かつては農村の広場や、水上の
舞台で公演されました。紹劇の舞台では、大掛かりなセットは無く、持ち道具も
最小限でした。しかし、その舞台衣装には妥協が無く、現代に再現してもその素晴らしさ
に目を奪われるほどです。
  50年代後半、紹興劇芸術は、紹興劇芸術のすぐれた伝統を守りながらも、新しい
時代の演技意識を取り入れて、古い紹劇に若い活力を漲らせました。
  1960年、紹劇の「孫悟空三打白骨精」は、映画となってその名を広め、
国内外で評判を博しました。劇中の音楽も浙江紹劇団おかかえ楽団の演奏です。
  紹劇の孫悟空劇は、独自のものに、紹劇、京劇、昆劇の孫悟空劇の要素を
加えて、人、神、猿を一つに融化した独特の芸術風格を形成しています。
七齢童(章 宗信)先生は、京劇の南派孫悟空と融合させ、自ら一派を成し、
その弟子、六齢童(章 宗義)先生は、それを更に発展させました。
  ここ40年来、脚本、演出、演技、音楽、舞台美術など、総合的に力を合わせた結果、
「孫悟空三打白骨精」、「龍虎闘」、「火焔山」、「芦花記」、「血泪蕩」、「于謙」、「相国志」
といった新しいすぐれた演目を多く作り出しています。
  紹劇は、劇団内に訓練班を設け、多くの人材を養成し、後継者を育てています。
《孫悟空三打白骨精》(紹劇)(孫悟空:劉 建揚先生)

−地方劇−

  京劇(北京)・川劇(四川省)・昆劇(江蘇省)・秦腔(せん西省)・越劇(江蘇省・浙江省)、
紹劇(浙江省)などがあります。六齢童先生曰く「紹劇と越劇は、大体同じ」。
−紹劇を観た管理人の感想文−

  「紹劇」を初めて観た時、先ず、言語が理解できませんでした。聞けば、紹興語
であるとの事。しかし、不思議と飽きないんです。「西遊記」の物語は日本でもおなじみ
のはずなのに、観れば観るほど入り込んでしまいました。
  紹劇は、京劇をTVドラマ的にし、TVドラマを京劇的にしたような感じです。
"静と動"が自然に一体化し、音も激しいところはあるものの、耳障りではなく、特徴の
ある台詞から唄に入る時も、不自然さは感じられませんでした。大衆演劇に共通の
コミカルな場面も自然な流れとして人々を笑わせてくれます。役に成り切る姿勢が
半端なものではなく、もしかしたら、孫悟空は実在しているのかも・・・と思わせる、
六 齢童先生の卓越した演技は見事なものでした。
  映画では、全てスタジオロケで、大道具や小道具がありましたが、大衆の中での
紹劇には、多少の持ち物等はあるものの、その他は"何々があるつもり"の
"つもり劇"です。観客は、これがあるつもり、あれがあるつもり、で観劇します。しかし、
それでも見入ってしまうのは、紹劇の役者が本物の"芸術家"だからだと思いました。
紹劇を一言で言うなら、おもしろい!

《孫悟空三打白骨精》(紹劇)(孫悟空:劉 建揚先生)

−余談−

  六 齢童先生の孫悟空メイクは、30分で完成するそうです。
  私なんか、メイクに1時間もかかるのに・・・。

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